独奏Humanity

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《手》 寒がりの 乾いた砂の手 冷たい雨なら染み込めない 野性の鳥が獲物を狙う 羽撃きが眠りを妨げる 暗がりの路に潜む迷子 探索の旅を 捜索にすげ替え 差し出す 偽りの笑みに 絢爛の灯は只 眩い 過ぎ往く人も町も過去も 全てを遺す術は持たない 買い被りの従順な瞳で 満ち足りるなら それも幸福 刺々しい口調の歌い手 何もかも悟り 知るかの様に 裂かれた森を走る騎馬 手の長槍を血に染めて 礼に欠ける若き狩人は 遠退く蹄に毒舌を射掛ける 野性の勘が得物を研ぐ 在(ナガラ)える その為に 解放を許さぬ 錆色の手 有り続ける銅像は 語り継ぐ 忘却を許さぬ その眼が 生きた時が過去であろうと 証を求め 足掻く知性に 答える術も 何も持たぬ儘 疑心暗鬼を巧みに隠し 充ち足りるなら それも幸福
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