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「オ前ノ 命ハ 残リ 24時間ダ」
それは朝日が昇って間もなく。
出来る事なら覚めて欲しくもない眠りから目覚めてしまった時の事だった。
大きな釜を肩にかけた不気味な黒い影……。
「死神かよ。また明日迎えに来んのも面倒だろ?
今すぐ連れていってもいいんだぜ?」
強がりでも何でもねえ。
この荒れ果てた地で。この使い物にならない体で。
生きる意味も命の価値も、俺にはなかったから――。
戦いが始まったのは何年前だっただろう。
突如巻き起こったクーデター。
反乱軍と政府軍との戦いは熾烈を極め、街の至る所で建物が壊され、人々が命を失ってた。
そんな時代で。俺は政府軍で数十名の部下を束ねる立場までのし上がってた……のに。
ほんの些細なミスだった。
けれど、取り返しの付かないミス……。
ほんの一瞬で、俺は右目と左足を失った。
軍人として使い物にならなくなった俺は、いとも簡単に軍を出され、ただただ抜け殻のように生きてる。
どうせ死ぬなら戦場でパッと散りたい――。
そんな願いさえ叶うことなく。
だから。
俺にとっては、お迎えが明日だろうと今だろうと狼狽えることもねえわけで。
「早く連れてけよ」笑いながら言って退けたのに。
次の瞬間には黒い影は消えていた。
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