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それから2時間ほど後――。
俺の目の前には小汚えガキがにこにこと微笑んでいる。
これはきっと何かの間違いだったんだ。
この俺が、こんなガキを助けるなんて。
あの時。
初めから何もなかったかのように消え去った黒い影に、まだ自分が寝ぼけていて夢でもみたんじゃねえかと疑ってみてた時。
静かだった街に、突如怒声が響き渡った。
……このクソガキが一欠のパンを盗もうとして、どこかのオヤジに怒鳴られ、殴られてた。
僅かな食料を求めて、こんなガキまで盗みを働く時代で。
僅かな食料のために、大のオトナがやせ細ったガキに手をあげる。
特に珍しい光景でもなく、今までの俺なら手出しも口出しもしなかった……はずなのに。
気付けば、そいつを助けちまってた。
腐っても戦場を生き抜いてきた軍人。
その辺のオヤジになんか負けることはねえわけで。
……単に、目障りだったんだ。
見苦しくて、醜くて。
別に小汚えガキを助けようとしたわけじゃねえ。
ただうるせえオヤジを黙らせてお帰り頂いただけだ。
ただ、それだけ。
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