15人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前、名前は?」
別にそんなにこのクソガキに興味があるわけじゃねえんだけど。
名前くれえ聞いてみようかと思ったんだよ。
うん。呼び辛えし。
なのに。
ガキは困ったように微笑むだけで、返事をすることはなかった。
……もしかして。
そう思った時には、クソガキが立ち上がって、小さな瓦礫の欠片を握り締め、地面にガリガリと文字を書き始めた。
『エリー』
拙い文字で、地面にはそう綴られている。
やっぱり。
「エリー……。お前、声が……」
そう呟いた俺に、エリーはなんとも言えない顔で頷いてみせた。
……くそったれ!
この時代は、この争いしかない世界は、こんなガキから声まで奪うのかよっ!!
行き場のない怒りで胸が張り裂けそうになる。
そんな俺の胸を、エリーのか細い指先が指した。
「は?」
もしかして……
「俺の、名前……?」
言いたいことが伝わってか、嬉しそうに笑うエリー。
「……レヴィン」
小さく呟けば、エリーの口元が僅かに動く。
『レヴィン』
たぶん、そう言ったはずで。
なんだか気恥ずかしくて、心臓の辺りがくすぐったくて。
「ま、まさかお前が女だとは思ってなかったよ、エリー」
そう言って茶化せば、意外と可愛らしく見える顔が、ぷくりと膨らんで、また俺を笑顔にさせる。
最初のコメントを投稿しよう!