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膨れっ面のエリーの頬を親指で拭ってみる。
「いや、ちゃんと綺麗にすれば別嬪だな」
そんな軽口を叩いてみれば、今度は一気に膨らんだ頬が萎みながら赤く染まる。
その仕草がやけに可愛くて、自然とエリーの頭を撫でてしまった、
その時。
俺の手の平にあった感触が、一瞬にして失われ、どさりと何かが倒れる音がした。
「エリィィィイィィーーーー!!」
瓦礫の上に崩れ落ちた彼女を見て、俺は知ったばかりのその名を叫んだ――。
「どうなんだよ、ジジイ!」
俺は目の前にいるヨボヨボのクソジジイの胸ぐらを掴んで言った。
あれから、俺はエリーを抱えて医者を探した。
よくよく考えれば、使える医者は全て軍に連れてったはずで、こんな寂れた街に医者なんかいるはずねえのに。
ようやく見付けたのは自力で歩けもしねえヨボヨボの自称医者のジジイ。
「わしにはどうすることも出来んよ。
……診断は出来ても治療が出来ん。
ここには薬も点滴もないんじゃから」
愕然とした。
薬もない。点滴も。注射針一つない。
……当然だ。
『軍に役立ねえ人間に医療はいらねえ』
2~3年ほど前、そう言って街人から全ての医療を奪っていってたのは、俺自身じゃなかったか……?!
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