タイムリミット 

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  「なあ……ジジイ。  薬があれば、道具があれば、コイツは治んのか?」 あの時、軍が奪ったモンが今あれば……エリーは助かる? 「……きっと。  身体にある傷口からばい菌が入って、全身に巡っとるんじゃろう。  この子に必要なのは、僅かな薬と静養、適度な食事じゃが……」 今はそれがないんだ、とジジイの声が聞こえた。 「このままだと?」 ああ、声が震えてる。 きっとジジイの答えが、予想できるから。 「明日の朝までもつかどうか……」 そう言ってジジイは目を伏せた。 エリーが、死ぬ……? 「おいっ、お前さん! どこへ行くんじゃ?!」 どこって? 「軍部まで」 「馬鹿なっ。軍がこんな娘のために薬なんかくれるはずがないっ」 ……知ってる。 そんなこと、誰より俺がわかってる。 それでも…… 「行ってくる」 それしか、ねえじゃねえか。 今の俺に出来ることは。 「無駄じゃ! アンタさんまで軍に殺されるぞっ」 ああ。 自分でも馬鹿げてると思う。 「それに……残念じゃが、その足では…………」 間に合わねえかもしれねえ。 それでも。 「行ってくる」 それ以上、ジジイは何も言わなかった。 「エリー! ちょっくら行ってくるから、それまで死ぬんじゃねえぞっ!!」 ボロ布に横たわるエリーから返事はなかったけど、 きっとアイツなら大丈夫だ。 だから。 そう信じて……俺は俺の出来ることをやるだけだ。  
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