子どもの国

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 男性は毛質が堅そうな頭髪と同色のYシャツとスラックスを着用していて、女性とは全く統一感が無いが、それを気にせずに二人とも思い思いの格好をしている。 「ねぇ満月(ミヅキ)君。あなたはあれを見てどう思う?」  金髪の女性が連れの男性に声をかける。 「…………」  満月と呼ばれた男性は女性に促されその方向を見る。  満月はじっと見つめ、しばし黙り込む。 「………子どもがたくさん働いている」  そう言うとまた無言になる満月。  どうやら必要最低限以外はあまり話さない性格のようだ。  確かに彼の言う通り、谷底で十代にも満たない子ども達が数十人集まり、岩を削り、それらを籠に入れ運んでいた。  普通の人間だったらを顔をしかめそうな満月の態度だが、女性はそんな彼に慣れているようで、嫌な顔をせず当たり前のように接している。 「そうだね。あれは児童労働だよ」  見てごらん、と女性は別の場所を見るように促す。  満月がそちらに目を向けると、がたいの良い男が岩の上に立ち、先端が何本も割かれた鞭を持ち子ども達の仕事を見張っている。
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