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その様子から見ると、子ども達が自ら進んで働いているとは言えない状況だ。
「……なぜ、子どもが働いている?」
満月はなぜ、こんな辺鄙な場所で子どもが働いているのかと聞きたいらしい。
いくら人間に興味がない彼でも、こんな危険な場所で、大人ではなく子どもが働くのはおかしいと理解できる。
「理由なんて色々あるわよ」
例えば発展途上国だと国全体が貧しいとか、戦争で子どもが働かざる得ない状況になったとかね、と女性は続ける。
「次に行く国は貧しいのか?……シャル」
シャルと呼ばれた女性────紗羅那(シャラナ)はさぁ、と相槌を入れる。
「私達ができる事なんて、彼らの行く末を見守る事くらいよ」
そして紗羅那は谷底から視線を外し、正面の対岸の崖を見る。
「さて、次の国はどんな所かしら」
口元に笑みを浮かべ、対岸にある小さな国を見つめた紗羅那は楽しそうに言った。
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