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「あの子を捕まえろ。……ただし、勢い余って殺すなよ?」
紗羅那は低く、鋭い声で短い命令を出すが、その声は普段の喋り方からは想像できないようなドスの効いた男性口調になっている。
そんな彼女に臆することもなく満月は静かに頷いて、身を低く構えながら駆け出した。
人混みをすり抜け、見失った子どもを追いかける様はまるで嗅覚の良い、忠実な猟犬そのもの。
何も手がかりの無い状況だが、満月は何の迷いもなく走って行く。
風の如く速いというのが今の満月にぴったりだ。
そんな満月に小さな異変が起き始める。
満月の身体が徐々に白い光が纏い始め、その姿が変化するのを誰も見ていなかった。
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