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森の奥から聞こえてくる唸り声。
迫り来る恐怖に少年はゆっくりと頭を持ち上げると、そこには散々追いかけ回してきた黒い魔物が姿を見せていた。
闇の様に黒く原型を止めないその大きな身体はまるで熊か何かの様で、でも違う。
疲れた身体ではもう走ることも儘ならなかった。
戦う術さえ知らない少年は諦めたかのように魔物を見つめる。
「お母さん」
そう呟いた少年の目からは大粒の涙が一つ溢れ落ちた。
頬に伝わる生暖かい感触。
(……ごめんなさい……)
少年は頭の中でそう誰かに謝った。
その時だ――。
「伏せろ!」
突然闇の中から聞こえてきた声と同時に一発の銃声が森全体にこだました。
一瞬のことで何がおこったのか分からず少年は魔物から目が離せない。
間髪入れず再び弾丸が放たれ、森中にけたたましい音を響かせた。
放たれた弾は見事に魔物の腹を突き抜け、魔物は少年の目の前でよろめきを見せた。
それでも踏ん張りながら地に立ち続ける魔物は力を振り絞り、怯える少年に手を伸ばす。
しかし、それより早く少年の前に一人の青年が立ちはだかった。
左手に短銃が握られているところを見ると、魔物に弾丸を放ったのはこの青年ようだ。
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