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「なんで私といてくれなかったの?なんであんな奴らと一緒になって私を閉じ込めようとしたの?なんで約束を守ってくれなかったの?なんでなんでなんで?」
僕の目の前に立った最愛の恋人すみれは、僕に矢継ぎ早に言葉を投げてくる。
「私は……隼人くんだけいればよかった……。だから、今、一緒に約束を守ろう?」
そう言ってすみれは持っている出刃包丁を振り上げた。
「……そうか。約束だったもんな……」
そんなすみれに僕はそう言葉を返す。
そうだ。約束だったんだ。
すみれは僕との約束を守ってるんだ。
「……うん。『死ぬまで一緒にいようね』って約束したから……」
包丁を頭の上まで振り上げてすみれはそう言った。
「だから……これでいいの。わたしもすぐにいくから……」
それが僕が聞いた彼女の最後の言葉。
それからすぐ、勢いよく包丁は降り下ろされた。
目の前が真っ赤に染まる。
薄れてゆく意識の中、僕が最後に見たものは、狂ったように何度も何度も出刃包丁を降り下ろしながら笑うすみれの姿だった。
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