♯のらねことのそうぐう

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凛は美人だ。雑誌で見るモデルなんかにひけをとらない程。 おまけにスタイルも良くてお洒落。 女は誰もが羨み、男は誰もが見とれる存在。 もちろん、親友の楓も凛を羨ましく思っているし、自慢に思っている。 凛と一緒に歩いていれば、男はみんな凛のことばかり目で追う。 自分に言い寄ってくる男たちも、凛と近付くためのきっかけとしか思っていない。 初めはそれが嫌で嫌で仕方なかった。一般的にはかわいいと言われる自分が、凛の前では霞んでしまう。そんなことで何も悪くない凛を妬んだりもした。 ただ楓が凛から離れなかったのは、凛は美人であることを武器に男に媚を売るような人間では無かったからだ。 凛は誰よりも自分の容姿を嫌っていた。理由は楓にもよく分からない。 ただ、言い寄ってくる男を毒のこもった口調でバッサリ突き放し、自分の容姿を褒められると露骨に嫌な顔をして不機嫌モードに突入する。 今まで楓が出会ってきた美人たちは、どこか自分を見下していたり、より好かれようと男たちに媚を売るような人間ばかりだった。 そんな胡散臭いものがたまらなく嫌になってきた頃、凛に出逢った。
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