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ー凛との出会いは大学の入学式。
地元である地方を離れ、「都会がいいじゃん?やっぱり。」というアホ丸出しの理由で東京の大学を選んだ楓は、もちろん知り合いなんかいるはずもなく。
着なれないスーツを着て大きな体育館の後ろの方のイスを選び、一人寂しくちょこんと座っていた。
周りを見渡せば、同じ高校から進学したであろう友人たちとじゃれ合う、お洒落な髪型にお洒落なメイクをした人たちの姿が所々で目につく。
「友達できなそう、やばい。出遅れてる!」と楓が密かに焦りを感じ始めた時だった。
さらさらストレートの黒髪をなびかせた、とんでもない美人が、かったるそうにあくびをしながらドカッと豪快に楓の隣に座ったのだ。
…なんだこの人。今まで見た人間の中でも、ずば抜けて美人だ。モデル?芸能人?…でも性格悪そう。目付きがヤクザみたいだ。この人もきっと今まで出会った美人で嫌味な奴らと一緒だな、きっと…
隣に座る超絶美人を横目でチラチラ見ながら、楓は落胆のため息をついた。
心なしか、周りが彼女を見てざわついている。そりゃそうだよな、こんな美人。と思いながら再び彼女をチラりと見る。
私の知っている美人は、ここで目線をざわつく集団に向けてニコッと微笑むんだ 。はい、やるぞ。ほら!
彼女は目線をチラッと集団に向け……………
「チッ。」
え、えぇぇぇぇー?今、舌打ちした。この人、微笑みの代わりに舌打ちした。何なの?
あっ、あれか。私を見たくせに、ざわつきが少ねーよっていうタイプの舌打ちか。なるほど。
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