4人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「ええい、お前のような怪しい者を入れる訳にはいかぬと言っておるだろうが!!」
がつん、と頭を殴られるような衝撃に、寝不足の頭を抱えたナインハートは緩慢な動きで首をめぐらせた。
衝撃の根源は、今週になって数十回目の門番の大声だ、疲れた頭にがんがんと響く。
どうやら、このエレヴへの来訪者に門番がまたケチを付けているようだ。
だが、その巨体と集まってきた野次馬のせいで、来訪者の姿は見えない。
はぁ、と大きく溜息をついて、ナインハートは騒ぎの元へと足を進めた。
「何事ですか、大声を出して見苦しい」
「ナインハート様!!そ、それが、怪しい奴が騎士団長になりたいと……」
「騎士団長………」
またか、と、ナインハートは心の中で再び溜息をついた。
事の始まりはほんの数ヶ月前、暗黒の魔法使いの復活を防ぐため、女王シグナスたっての願いで、彼女の名を冠したシグナス騎士団を立ち上げたことだ。
そしてシグナス騎士団の最大の特徴は、それなりの実力とある程度の身分が証明されれば、誰であろうと騎士団の師団長になる事が出来る、というものだった。
そのため、腕に覚えのある者たちが、正義や平和、もしくは金や権力を求めこのエレヴに押しかけていると言う訳だ。
……尤も、その処理の所為で、ここ数ヶ月、ナインハートは寝る間も惜しんで働きづめる羽目になっているのだが。
「……退きなさい、貴方の巨体が邪魔で来訪者が見えません」
「し、しかし!こんな怪しい女……!!」
なおも叫びつのる門番を押し退け、ようやくその来訪者の姿をとらえる。
瞬間、ナインハートは思いもかけずに息を呑んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!