夜のお茶会

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 返事を待たずに部屋に向かい、積み重なった段ボールを一つずつ開け始めた。  小説、教科書、コンポ、ちょっとした小物…それらに交じって、先日もらったばっかりの高校の卒業アルバムが出てくる。空白のページにはみっちりと友達からのメッセージが書き込まれ、それだけでは足りないと、写真の載っているページのちょっとした空白にまで書き込みがされている。友達は、数え切れないぐらいできた。そのなかで、悩み事を相談できる友達が何人いただろう。該当する人間がいないかと記憶を探ったが、一人も思い浮かばないのに溜息が零れた。友達と親密になりたくない、と言うわけではない。でも、自分の抱いている暗闇を消してくれる人なんているわけがないと考えると、そこまで親密になろうとは思わなかった。  サト君がいてくれるから、他にはいらない。一人いれば十分だ。  傾倒しすぎている、とは思う。けれど聡以上に気持ちを分かってくれる人なんていないし、聡もそれを甘受してくれている。聡がいなかったら、今頃私は壊れていたかもしれない。  ああ、嫌だ。  胸の中を、黒い感情が覆っていく。寂しいと感じる時は、いつもそうだった。何かに押しつぶされてしまいそうで、誰かにどうにかしてほしくて。  眺めていたアルバムを乱暴に閉じると、携帯電話を取り出した。携帯電話は本当に便利だと思う。これさえあれば、誰かと繋がる事ができる。聡にメールを打とうとして、ふと思いついて別の人間にメールを打つ。 【今、何してる?】  初めてメールを送る相手に、返事が返ってくるのか心配でドキドキしながら携帯を握りしめる。返事は程なくして返ってきた。件名は【突然だな。】相手は昨日知り合った悠介だ。 【今から夕飯を作ろうとしていた所だよ。】 【じゃぁ家にいるんだ。  夕飯食べたら、そっちに行っていい?】 【いいよ。】  その文章に、ほっと安堵の息を吐く。嬉しくて、部屋で一人ニヤニヤしている千尋に、夕食ができたと母の声が掛った。  夕飯を食べ終わって母親を見送った後、すぐに悠介の部屋に向かうと、悠介はまだご飯を食べている所だった。淹れてくれたコーヒーを持って、ローテーブルで床に座ってご飯を食べている悠介の近くに座る。 「まだお母さん起きてるんじゃないのか?」 「お母さんは仕事でお泊り。さっき出てったよ。」  ふぅん、と頷き食事を続ける。
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