夜のお茶会

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「何の仕事を?」 「お花屋さん。毎週日曜は早朝から準備してるから、お店に泊まってるんだって。」 「大変なんだな。お父さんはどんな仕事をしているんだ?」 「ん~?普通のサラリーマン。結構重役してるって聞いたけど、どんな仕事かは詳しく聞いた事ないなぁ。聞いても分からないし。」 「昨日、今年度から転勤って言ってたな。場所は?」 「海外。」  転勤、としか言わなかったから、日本の遠くだと思っていたんだろう。少し驚いた後、ああ、と頷いて箸を動かす。 「そりゃあ簡単に帰ってこれない訳だ。」 「国内だったけど、最近はちょくちょく出張に行ってたからね。私はあんまり何とも思わないな。一番ショック受けてるのはお母さんの方。ケンカした事なんか一度も無いぐらいの仲良さだから。この間、寂しくなるなぁって呟いてたの聞いたし。」 「そうかぁ。……好きな人と離れるのは、辛いだろうな。」  どこかぼんやりとしながら悠介が呟くのに、ふと、好きな人と離れた経験でもあるのかと思ったが深くは考えなかった。 「ん~…でも、そんなにないと思うよ。今までも、少し長い出張とかには、お母さん良く会いに行ってたから。」 「そこまで。本当に仲が良いんだな。…母親が会いに行ってる間はどうしてたんだ?一緒に行ってたのか?」  お母さんがいない時はどうしていたっけ… それに思い当たり、千尋は眉をひそめた。一番、自分自身が分からないと感じていた時期だ。何をしていたかなんて、簡単に言えるような事じゃない。翳が過ぎったのに気付かれないよう、明るく笑う。 「ううん。会いに行ってたのはお母さんだけ。私は、お留守番したり、サト君の所に行ってたりしてた。」 「サト君?」 「私の相談相手。親友って言えば親友なのかな。…くだらない話とか悩みとか、なんでも聞いてくれるの。私が一人でいるのが嫌な時は、いつでも電話していいし、会いに来ていいって言ってくれる。」  その言葉に、へぇと言った後、何か思い付いたように千尋に聞く。 「俺の所に来ていいのか?」 「何で?」  なんでそう言う話になるのだろうと首を傾げる千尋に、悠介は言葉を付け足す。 「サト君、は、嫌がるんじゃないのか。他の男の所に行くな、とか。」
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