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人の家に行く事に抵抗はない。たとえそれが独り暮らしの男性の家でも。しかも利用できるものは利用するタチなので、断る理由もない。
「いーの?部屋行って。」
「ダメだったら言ってないさ。来なさい。今、鍵を開けるから。」
「わぁい、おじゃましまーす。」
そうして開いた扉の中へ、彼の後に並んで入った。
「年齢は?」
「今月高校卒業。」
「おもいっきり未成年じゃないか。」
「後2年で成人じゃん。」
「わざわざ外で吸うくらいなら、煙草止めなさい。」
「もう3年吸ってるもん。立派な依存者です。」
3年って…と彼は驚いたようで唖然としていた。千尋が罪悪感も持たずに煙草を吸っている様子に、呆れながらカーペットから立ち上がる。
「コーヒー、紅茶、お茶?」
「コーヒー。砂糖なしでミルク入れてー。」
はい、はい。と言いながらキッチンに向かい、マグカップにコーヒーを注いでくれる。
部屋は、男の一人暮らしの割に綺麗に片付いていた。片付いていると言うより、元々物が少ない。
アパートは一応1LDK。LDKはつながっていてキッチンは簡単に仕切られた対面式だ。
扉が閉まっているので部屋の中は分からないが、リビングにはテレビとソファとローテーブルしかない。キッチンのシンクに食器が残っていなかったので、綺麗好きなのかもしれない。
千尋はソファとローテーブルの間に座って煙草を吸っていた。その少し離れた隣に、2つマグカップを持ってきた彼が座る。
「さんきゅー。…ね、おじさん、名前は?」
「榎木 悠介。まだ27だから、おじさんではないよ。」
「27か、見た目はまだ若く見えるよ。奇麗な顔してるもん、おにーさん。」
にやりとしながら言うと、榎木は更に苦笑した。
「君の名前は。」
「本多 千尋、18歳。何日か前に、お隣に引っ越してきましたー。」
「だからか。見たこと無い顔だと思ったんだ。かといって、このアパートに住んでる人たち皆知ってるって訳じゃないけど。」
「どっかですれ違ったりした事はあるかもしれないね。前住んでたの、ここから近くだから。」
その言葉に、悠介は不思議な顔をする。
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