夜のお茶会

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 けれど… 「……今日行くって、言っちゃったからなぁ。」 『は?どこに?』 「昨日、夜中の1時に仲良くなったお隣さん。」  笑いながら言う千尋の言葉に、聡はひきつった声だした。相手の驚きようが可笑しくて、クスクスと笑い声が漏れる。 『夜中の1時?そりゃまた、えらい時間に知り合ったな。』 「榎木 悠介っていう男の人。27だって。」 『27かぁ。』  千尋は聡に夜の事を全て話した。聡に隠し事は何も無いから、もちろん千尋が煙草を吸っている事も知っている。良き理解者だ。 『夜中の3時に家に上がらせるねぇ。そいつもそいつだが、お前もお前だよなあ。』 「デスネー。まぁそんな感じで、今日も行く事になってるんだ。」 『うっわ、浮気かぁ?』 「そう。浮気、浮気~。私が会いに行かなくて、寂しい?」 『バぁカ。うぬぼれんなよ。…どこぞにいるより、居場所がはっきりしてるからいい。』 「…うん。そうだね。……ありがとう。」   聡と千尋は付き合っているわけではない。仲の良いお友達だ。だから浮気だと言うのはワザとで、千尋が1人でいるのが嫌な事を分かっていて心配してくれる。それを感じるから、いつも頼ってしまう。声を聞いたり、そばにいるだけで安心できる。  その時、ふわぁっとあくびが聞こえて、そう言えば寝る直前だ、と言っていた事を思い出す。 「ごめん、寝る直前だったね。私も今から寝よう。」 『夜遅くまで起きてるからだ。』 「学校、もう自由登校だから、する事ないんだよね。」 『寝るんなら、俺んとこ来るか?添い寝してやるよ。』 「私がいつも添い寝してあげてるんじゃない?…ん。声聞けたから、大丈夫。ここで寝る。」 『そか。またいつでも電話してこい。寝てる時以外は、いつでも出てやるから。』 「うん、ありがとね。…じゃぁお休み。」 『ああ、お休み。』  隣とは違い、こちらは2LDKだ。玄関を入ってすぐ横にある部屋を千尋が使用していて、隣と同じようにリビングのすぐ隣にある部屋に母が寝ていた。千尋は自分の部屋に向かい、唯一置いてあるベッドに寝転ぶ。枕の横に携帯電話を置き、ふっと微笑むとゆっくりと目を閉じた。
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