_朱雀

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次の日から俺の家には沢山の人が集まった。 『朱雀様、この村をお救い下さい。』 何人もの人にそう言われた。 『朱雀様、これを。』 皆、豪華な食べ物や衣類を俺にくれた。 『朱雀様、私のお家をお救い下さい。』 ある日、泣きながら来たおばさんも居た。 どんなお願いをされても、俺にはそれを実行する力が無かったから全てのお願いに返事をしなかった。 『朱雀様』 『朱雀様』 『朱雀様‥』 気が付いたら、仲良くしていた友達にもそう呼ばれていた。 『朱雀様!朱雀様が居れば皆死なないんでしょ?神様だもんね!!』 綺麗な緑色の瞳をした少年が"朱雀様"に笑いかけた。 『俺の名前は、朱雀様じゃない。"カケル"だ。』 無邪気な純粋な瞳をした少年に嘘はつきたくなかったので、俺はこう応えた。 『‥カケル?朱雀様にも名前があるんだね!俺はね、マサ!!』 『マサ、良い名前だな。』 そう言うとクシャっとした笑顔で笑って、『ありがとう、カケル!』と言った。 名前を呼ばれたのは何日ぶりだっただろうか‥ 少年と別れた後もあの無邪気な笑顔が頭から離れなかった。    
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