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Side.優(マサ)
朱雀様がカケルだって分かったとき、皆が祝福した。
『朱雀様、ありがたや』
『朱雀様、幸福を』
『朱雀様、助けて下さい』
『朱雀様』
そう言って村の皆が喜んだし、歓迎をした。
でもこの時からだった、朱雀様が笑わなくなったのは。
魂が抜けたような感じで、村人に返す言葉はどれも冷たく酷いものだった。
それから段々村人は不信感を抱き始めて朱雀様のことを悪く言う人が現れ始めた。
そんな時のある雨の日。
小さかった僕はまりつきが大好きで、人の目を盗んで雨の中まりをついて遊んでいた。
僕は肺の病気を抱えていたからそんな無茶をする僕を母はとても心配して、自分の子供の誰よりも手をかけて可愛がってくれていた。
でもそれを妬んだ僕の兄弟がいた。
兄弟が僕のまりを目の前を通った朱雀様に向かって投げた。
それは見事朱雀様の背中に命中した。
朱雀様は落ちたまりを拾ってこちらに向かって歩いて来た。
僕は怒られると思ったから、とっさに逃げて家の中に入った。
次の日の朝、戸を開けにいくと‥ずぶ濡れになった朱雀様が大事そうにまりを抱えて立っていた。
『はい。どうぞ。』
朱雀様はそう言って僕にまりを渡した。
優しい笑顔を見せながら。
『ありがとう!』
つられて僕も笑った。
『朱雀様!朱雀様が居れば皆死なないんでしょ?神様だもんね!!』
『俺の名前は、朱雀様じゃない。"カケル"だ。』
『‥カケル?朱雀様にも名前があるんだね!俺はね、マサ!!』
『マサ、良い名前だな。』
そう言って頭を撫でてくれた。
『ありがとう、カケル!』
そう、あの時朱雀様は自分のことを"カケル"と言った。
後から両親に聞くと彼の本名は"紅 将"だということが分かった。
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