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私の住む町へ来るにはかなり時間がかかる。
緑の木々が生い茂る山なみと真っ青な海原のちょうど間、その沿岸に沿ってアスファルトの道が延々と続いている。
その沿岸道路の脇を、ローカル線が通っており、年老いた電車の本数は非常に少ない。
そのずっとずーーーっと先に私の町はある。
だから車で来ても、電車で来ても、どちらにしても市内からはかなり遠い。
この小さな町は潮風が香る海辺で、漁業の町。
どこまでも続く青い海に、どこからともなく海鳥の鳴く声が聞こえる。
町のほとんどの家庭が漁で生計を立てていて、船場には何隻もの漁船がプカプカ波に揺られている。
また、町内には旅館や民宿が少ないながら点々とある。
昔、宿場として栄えた時代があったらしく、その名残りだそうだ。
ここには白い砂浜が自慢の海水浴場があり、夏になるとそれを目当てに観光客が訪れる。
しかし海のシーズンが終わると、その観光の収益はパタリとなくなる。
陸の孤島と呼ばれる小さな世界、それがここ『姫島町』だ。
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