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布団を敷き終わり階段を下りようとすると、階段の下でケンちゃんが立ってこちらを見上げていた。
その腕には何処かの客室から拝借してきただろう布団が抱えられている。
「帰っていいってば…」
「帰んないから」
そう言ってケンちゃんはスタスタと廊下続きの自宅へ歩いて行った。
そうだ…ケンちゃんは超が付くほどの頑固マンだった。
階段を下りながらため息をつく。
玄関先や勝手口の戸締りをして私も自宅の方へ向かう。
テレビのある居間から廊下に明かりが漏れている。
どうやらケンちゃんは居間に寝る気らしい。
居間を通り過ぎ、風呂場へ向かい浴槽にお湯を張る。
ケンちゃんがうちに泊まるのって、小学三年生以来じゃない?
しかもあの時は雄太兄ちゃんも一緒だったよね…
そして居間の障子を開けると、布団の上に寝転がりテレビを見ているケンちゃんと目が合う。
テレビ画面に目をやると連ドラが放送されていて、ちょうど主人公のラブシーンが映っていた。
「……」
「……」
画面を観たまま、お互い無言の時間が流れる…
「ゴホ、ケンちゃんお風呂」
わざとらしく咳払いしてそう言うと「あぁ」と何食わぬ顔で立ち上がり風呂場へ消えていった。
ドク、ドク、ドクとワンテンポ遅れて心拍数が上がりだす。
小学生の頃なら「うわ!こいつらチューしてる!」「げ!気持ち悪ッ!」とか言いながら笑って二人で観れていたはず…
それが自分たちと全くの無関係ではない今となっては……非常に心臓に悪い。
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