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「…ハル?」
寝ボケ眼で私を見つめながら名前を呼ぶケンちゃんに胸がキュンとなる。
でもそれよりもケンちゃんが覚醒してこの状態を突っ込まれると非常に困る。
「おやすみ、ケンちゃん」と言ってさっさと立ち上がろうとすると、急に腕を引っ張られ元の状態に戻った。
「どこ行くの?」
「へ?」
「…どこも行くな、ハル」
「……んなッ!?」
しれっと大胆なことをおっしゃるケンちゃんの目は未だに寝ボケている感じ。
それなのになぜか力だけは強くって、私はケンちゃんの腕の中に綺麗に収められてしまった。
ちょっと!えっと!無理!何これ!?
額にケンちゃんの吐息がかかり顔が熱くなっていく。
自分のうるさい心臓にパニックになり、ひとしきり一人でジタバタして抜け出ようとしたが、それを阻止しようと今度はケンちゃんが両足で私を挟み込む。
こうなるとプロレスの寝技のような体制になり身動きが取れなくなってしまった。
ゼーゼーと息を切らしながらケンちゃんを見るとスーっと涼しげな顔で眠っている。
よし分かった、ここで寝る。
眠れる気が全くしないけど、この体制ビクともしないし、明日朝早いし…
ケンちゃんの抱き枕状態になりながら何とか息が楽に出来る状態をとって目を瞑る。
トクン…トクン…
ケンちゃんのゆっくりとした心音が子守歌のように聞こえ、そのまま私は簡単に眠りについた。
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