229人が本棚に入れています
本棚に追加
私は夢を見ていた…
そこは暗いけれど耳に波の音が流れてきて海辺だと分かった。
隣に目をやるとケンちゃんが胡坐をかいて靴ひもをいじっている。
…あれ?なんかケンちゃんが幼い。
その横顔は確かにケンちゃんなんだけど、髪が現在よりもっと短くて中学生くらいの頃の彼だった。
珍しく頭の中でこれが「夢」だと分かっている。
中坊のケンちゃんはこちらを見ようとせず俯いたまま。
ふと自分の手元を見るとケンちゃんがくれたミサンガが握られていて「あ、これは中学卒業して姫島を離れる最後の日だ」と分かる。
「ケンちゃん、私、明日行くよ」
夢を見ている私の意識とは別のところで私がそう話している。
「おう」
「今まで色々ありがとうね」
それからしばらくの間沈黙が続き、夢だと分かっているのにあの時を思い出して胸が締め付けられる。
「じゃあね、ケンちゃん。元気でね。ミサンガありがと!」
私が立ち上がり堤防を歩いてケンちゃんから離れていく。
夢を見ている私の意識は堤防に一人残されたケンちゃんの隣に残ったまま…
最初のコメントを投稿しよう!