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ケンちゃんが俯いたまま自分の目元を隠すように片手で頭を抱えた。
「マジで行くなよ、馬鹿ハル…」
肩を震わせながら幼いケンちゃんがそう呟いた。
夢なのに妙にリアルなその光景に不思議な感覚を覚える。
それと同時に泣いているケンちゃんが愛おしくてたまらず思わず抱きしめたくなるけど思うように体が動かない。
彼に触れることが出来ないもどかしさと別れたときのツラさが甦り私まで泣きそうになる。
…ケンちゃん、私は隣にいるよ。此処にいるよ。
声も出なくて涙が溢れてくる。
「ハル…好きだ…」
ケンちゃんが小さな小さな声で呟いた。
その声は震えていて途切れ途切れで、相手のいないとても切ない告白だった。
こんなに泣いているケンちゃんは見たことなくて、夢なのにどうしてだろう…
本当にケンちゃんがあの時そう言ってくれたような気がする。
段々と視界がボヤけて幼いケンちゃんが消えていく。
あ、夢が覚めてしまう…
「…ケンちゃん!!」
夢の中でようやく声が出て自分でも驚いた。
そして俯いて泣いていた幼いケンちゃんがゆっくりと顔を上げこちらを向いた。
「大丈夫だから!私、絶対に戻ってくるから!だから…」
泣き顔の幼いケンちゃんが徐々に白く消えていく。
「だから、待ってて!!」
そう言った瞬間、目の前が真っ白になりケンちゃんの姿が消えてしまった。
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