宿敵ケンちゃん

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家を出ると、海の方までなだらかな下り坂になっていて、その坂の両脇に民家が並んでいる。 私は正面に見えるキラキラ光る海と大きな白い入道雲を見ながら坂を下っていく。 「お、ハルちゃん。ついに夏休みの宿題終わったか?」 黒いゴムの長靴をガコッガコッと鳴らし煙草をふかしながら近所のおじちゃんが坂を上ってくる。 「ちょっ!おっちゃん、なんでそのこと知ってんの?」 私が吹き出しながら聞く。 「この町の奴ならほとんど知っとるわ。ハルちゃんの宿題地獄は毎年恒例だろうが。」 「うるさいわ!しかも、まだ終わってないし!」 ゲラゲラ笑いながら私とおじちゃんはすれ違った。 この町のコミュニティーは侮れない。 町全体が家族なんじゃないかと思うくらいお互いの情報を共有している。
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