第一章「羽音 ~Pulse of Fry~」

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ぶ~ん。 ……何かの羽音が聞こえる。蚊か?それとも、アレか?とにかく、耳障りだ。 ぶ~ん。 ……耳につく羽音が、執拗に俺を追い立てる。眠れない。 時刻は午前4時をまわろうとしていた。 最近はずっとこうだ、眠れない。最近といっても、ここ1週間だが……。 いや、それでも、一週間も眠れないのだ。――ずっと。一睡もしていない。 「寝た」と思ったら起きる――おかしいのだ。 もともと、規則正しい生活ってのを送っていたワケではないが、 俺が寝ようとする時に限って、今日のように何かの羽音が邪魔しにくる。 その時すぐに部屋の明かりを点けても、なにもいやしない。羽音だけが、俺一人の部屋に響いている。 ……ぶんぶんと、絶え間なく。 いい加減気味がわるい。正体がわからない音だなんて。いい加減ケリをつけたい。 明日――といっても今日か。とにかく、殺虫剤でも買ってこよう。 「……。」 俺は、布団の上に横になった。そして、目を閉じるその前に、なんとなく窓の外に目をやった。 赤い。――窓のカーテンの隙間から、赤い光が漏れていた。 ……太陽ではないな。夜明けにはまだ早い。もし、太陽だったとしても、この光はない。 その光は――そうだな、救急車のサイレンのような――そんな光だ。 だが、それは、点滅はしていない。移動も何もしていない。何の音も聞こえやしない。救急車のソレではない。 (誰かのイタズラか?朝っぱらからいい迷惑だ。) 俺は、こんどこそ布団を被り、目を閉じた。 ぶ~ん。 まだ、羽音が聞こえた。
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