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ぶ~ん。
……何かの羽音が聞こえる。蚊か?それとも、アレか?とにかく、耳障りだ。
ぶ~ん。
……耳につく羽音が、執拗に俺を追い立てる。眠れない。
時刻は午前4時をまわろうとしていた。
最近はずっとこうだ、眠れない。最近といっても、ここ1週間だが……。
いや、それでも、一週間も眠れないのだ。――ずっと。一睡もしていない。
「寝た」と思ったら起きる――おかしいのだ。
もともと、規則正しい生活ってのを送っていたワケではないが、
俺が寝ようとする時に限って、今日のように何かの羽音が邪魔しにくる。
その時すぐに部屋の明かりを点けても、なにもいやしない。羽音だけが、俺一人の部屋に響いている。
……ぶんぶんと、絶え間なく。
いい加減気味がわるい。正体がわからない音だなんて。いい加減ケリをつけたい。
明日――といっても今日か。とにかく、殺虫剤でも買ってこよう。
「……。」
俺は、布団の上に横になった。そして、目を閉じるその前に、なんとなく窓の外に目をやった。
赤い。――窓のカーテンの隙間から、赤い光が漏れていた。
……太陽ではないな。夜明けにはまだ早い。もし、太陽だったとしても、この光はない。
その光は――そうだな、救急車のサイレンのような――そんな光だ。
だが、それは、点滅はしていない。移動も何もしていない。何の音も聞こえやしない。救急車のソレではない。
(誰かのイタズラか?朝っぱらからいい迷惑だ。)
俺は、こんどこそ布団を被り、目を閉じた。
ぶ~ん。
まだ、羽音が聞こえた。
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