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「え……? 今なんて言った?」
青髪の青年は目をぱちくりとさせながら黒ローブの人物に問い掛ける。先程の発せられた言葉が信じられないのか、青髪の青年は自分の頬を引っ張っている。もちろん夢ではないのだから、その行為は無駄と言えるだろう。
黒ローブの人物は特にこれといった反応を見せず青髪の青年を見上げ、口元を僅かに緩ませる。
「そんなにしばかれたいか?」
誰でも一見すれば腕力や筋力では青髪の青年が勝っているだろうと思うはずだ。しかし青髪の青年は乾いた笑いを溢して大人しくなった。
理由は不明である。
「とりあえず、俺らが休む部屋まで行くぞ!」
「ん」
青髪の青年が歩き出したと思えばすぐに足を止めた。その場所は応接間の右隣にある扉前。やや困惑気味に首を傾ける黒ローブの人物。そんな様子に目もくれず、青髪の青年は部屋へ入っていく。それに倣い、黒ローブの人物も部屋へ足を踏み入れた。
部屋の内装はシンプルであった。真っ白なシーツが被せられたベッドが二つに椅子は二脚。小さな鳥の刺繍が施された白いテーブルクロスが掛けられたテーブルが一台。それと滑らかな木材を使用しているであろう本棚が申し訳程度に置かれているだけであるが、テーブルクロスしかり、本棚しかり、どの装飾も丁寧で美しい。
「こーいう部屋、俺好きだな」
「エルの部屋は汚いからね」
エル、とは青髪の青年の名前らしく、小さくしょんぼりとした様子で椅子に座る。
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