空白の夜

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   黒ローブの人物はローブを脱ぎ、溜め息をついた。中に膝下が隠れる程ゆったりとした、黄色がかった絹の服を着ており、ちょっとしたワンピースのよう。ゆったりとした服のせいで体つきはよくわからないが、しなやかな指や一般的に見れば愛らしい顔立ちから、まだ幼いが女であると思われる。腰に長さを調整する紐が結わえてあり、着用者の細さを主張しているかのようだ。  ローブから見えた桃色を含んだ白髪は胸元まで伸びており、目は深海を思わせる暗い青。黒ローブを着ていた少女はローブを畳み、そのままベッドに潜り込んでしまった。 「あれ? もう寝ちゃう感じかい?」 「邪魔するなら怒る」  黒ローブを着ていた少女の子供っぽい言動にエルは吹き出し、「おやすみ」と一言だけ残し部屋から出ていった。黒ローブを着ていた少女はそのまま、何かを考えながらゆっくりと目を、閉じる。   ***  夕焼けが落ちたばかりだというのに、人々が生活している音は無く、ただ耳に痛い程の静寂だけが広がっていた。  そんな中、大通りを走るのはワンピースを着た少女。この街の特徴として、昼間は暑いが夜になると極端に寒くなると言うのにかなりの軽装だ。家へ向かっているのか、はたまた逃げようと走っているのか。少女の脳裏に浮かび上がっているのは、最近現れ始めたという殺人鬼だろう。  一つしかないはずの足音はいつの間にか、二つに増えていた。  
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