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「……私が、貴方を徹底的に潰すなんて選択肢はどうかしら?」
先程まで怯えきっていた表情から一転、冷たささえ感じさせる笑みを浮かべているワンピースの少女。殺人鬼は首を僅かに傾げていたが、すぐに顔色を変えワンピースの少女から離れた。
「逃げるなんて酷い。命まで奪うつもりはないのに」
「……もしかしてさっきまで演技? だとしたら凄いね! 結構痛いの貰っちゃったなぁ」
ワンピースの少女の演技に感心したかのように手をぱちぱちと鳴らす殺人鬼。月の光が差しているおかげか、殺人鬼の姿がくっきりと鮮明に浮かび上がってきた。
ぼさぼさになっている灰色の髪に、翡翠色をした大きな目。人懐っこそうな笑顔でワンピースの少女を見据えている。服はよくある麻の服だが、おかしな点は肩を貫通している尖った氷の塊。肩から僅かだが赤い液体が腕を伝い、地面へ落ちる。
氷柱を仕掛けたのはワンピースの少女なのだろう。どのように仕掛けたのかは不明ではあるが。
「もー、いったいなー」
「今まで貴方が食らった人たちの痛みだと思えば?」
「うーん、まぁそういう事にしてあげるよ」
風が、ワンピースの少女の白い生地と真っ白な髪を、殺人鬼の黄色みがかった生地と灰色の髪を、撫でるように吹く。二人の口元は僅かに、吊り上げられた。
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