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以前までは活気に満ち溢れていた街、ラビア。気候の差が激しく、砂漠の中にあるが地下水が豊富で観光客で賑わっていた。
しかし、人々の平穏は、ある殺人鬼の仕業により壊されてしまっていた。性別、年齢、容姿は不明。ただ現場は食い散らかされたような遺体が残されるだけであった。その殺人鬼に遭遇すれば生きて帰る事はほぼ不可能とすら言われている。
そんな街に訪れたのはこんな暑い中、黒いローブと白い手袋をし、へらへらとした笑いを浮かべ、後ろに髪を一本に括った長い青髪を持つ長身の青年とやや低めの身長に青髪の青年と同じ黒いローブに身を包み、深々とフードまでも被った人物の二人。黒ローブの人物は鼻から下までのみ白い陶器のような素肌を晒しており、フードから微かに覗く白い髪は僅かながら桃色を含んでいる事以外は不明である。
「あっつー。やっと着いたなぁ」
「…………」
青髪の青年はローブの襟を掴み、ぱたぱたと空気を送りながら黒ローブの人物に話し掛けるが、誰も居ないかのように黒ローブの人物は足を進める。青髪の青年はやれやれといった具合に笑みを溢し、黒ローブの人物を追いかけた。
いつもなら人でごった返している道も、今ではたった数人歩いているのを認識出来る程度だ。あんなに賑やかだったはずの風景が嘘のよう。青髪の青年は黒ローブの人物に話し掛けてはいるが、返事は無く、独り言を発していると言う可哀想な状況だ。
それでも青髪の青年は話し掛けるのをやめず、ここまで来ると清々しいだろう。
「あ、ここってホットサンドってパンが美味いんだってさ。仕事終わったら食おうぜ」
「…………」
「強制だから嫌がっても無理矢理食わせるんでよろしく。大丈夫、俺の奢りだからさ」
「自分のは自分で払う」
青髪の青年が根気よく問いかけ続け、黒ローブの人物が口にした言葉は淡々としている。それでも青髪の青年は嬉しそうに笑い、「やだ。それくらいは奢らせろっての」と和やかに返答した。
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