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黒ローブの人物も少しずつだがぽつりぽつりと喋るようになり、辿り着いたのは砂漠の中とは思えぬほど緑に溢れ、暗い街を皮肉っているかのように草木が生き生きとしている屋敷。正門の前には二人の門番が入り口を守っていた。
「うわぁ……でけぇな。流石領主様だな」
「……………」
青髪の青年は額に手を当て日避けを作り、感心したように息を漏らすが黒ローブの人物は無反応である。ただ、前のみを見据えていた。
暫く屋敷を見ていた黒ローブの人物は無言で正門から入ろうとしたが、門番二人に引き留められてしまった。表情は伺えない黒ローブの人物だが、雰囲気が全体的に不快感を滲ませている。
だが、こんな暑い中で黒いローブに身を包んだ不審者が、無言で領主に会おうとしていたら誰だって引き留めるだろう。
「なんだ貴様らは。名を名乗れ」
「……『フェンリル』から派遣された者だ」
「フェンリル……?」
「あ、お仕事を依頼されたんで来ちゃいました、みたいな?」
青髪の青年は門番の目の前で左手の手袋を外し、甲を晒す。そこには魔方陣の中に狼が記してある赤い印が刻まれていた。
「っ、暫くお待ちください」
門番の一人が急ぎ足で屋敷内へ入っていく。もう一人の門番は妙にびくびくした様子で二人から目を反らしていた。
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