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「知ってるとは思うが君らにお願いしたいのは、人々を恐怖に陥れた犯人を捕まえてそいつを君らでどうにかしてほしいんだ。……最悪、殺してしまっても構わない」
「ふうん。お偉いさんは優しいんだね。捕まえてどうにかして、だなんてさ」
「優しくなんかないよ。私は、甘いんだ」
領主は頼り無さげに笑い、小さく咳払いをした。領主の仕事には人々を敵襲から守ることが含まれている。それに犯罪者の脅威から人々を守ることにも当てはまるのだろう。
(すぐ犯人を殺せ、なんて言わない辺りはやっぱり甘いな。でも、)
「犯人は夜間から早朝に掛けて出没するらしいが、今はまだ日が高い。ゆっくり休んで英気を養っておいてくれ。部屋なら用意したから」
「ありがとうございます!」
「さて、と。二人を部屋まで案内してくれ」
「了解しました」
無表情なメイドは二人に視線を投げ掛け、応接間から出ていった。青髪の青年は慌てて応接間から出ていったが黒ローブの人物はまだ、領主に視線を向けていた。
領主が口を開きかけると、黒ローブの人物は淡々と言葉を吐き出した。その言葉は、
「嘘つき」
領主の動きを固まらせるのに充分な威力を持っていた。その間に黒ローブの人物は応接間から出ていく。テーブルには手の付けられていないのと僅かに残量が減っただけの二つの葡萄ジュースが物悲しげに、消費されるのを待ち焦がれていたというのに。
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