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黒ローブの人物が青髪の青年を待っているときぃ、と扉が開く音がした。黒ローブの人物は暇潰しを兼ねてか、その方へ耳を澄ませている。その方には正門を守っていた二人の門番が話をしながら歩いていた。
「領主様が依頼したのは、よりにもよってフェンリルか」
「シーフギルドより悪質だとか」
「なんでそんな所に依頼なんかしたんだろうな」
表情は伺えないが、ただそんな雑談に耳を傾けていた黒ローブの人物は、集中しすぎていたせいか気付くことが出来なかった。自分の傍にいる脅威に。
「わっ!」
「ひゃっ!?」
耳元で叫ばれたせいだろう。反射的に肩は大きく跳ねてしまい 、悲鳴に似たそれを口にする黒ローブの人物。耳元で叫んだのは青髪の青年でくすくすと、意地の悪い笑顔を作っていた。
「ひゃっ!? って可愛いな。うん、女の子みたいって俺は思う」
「……潰してやろうか」
「だってー、最初話し掛けても無視されてて、ムカつ……寂しかったんだもん」
「気持ち悪い。気持ち悪い」
「二回言う必要あるか?」
青髪の青年の行動に不貞腐れたのか、もしくは呆れたのか、黒ローブの人物は青髪の青年が結んでいる後ろ髪に手を伸ばして引っ張った。子供がよくやる悪戯だが何気に痛いらしく、青髪の青年は引き吊った声を漏らしていた。
「痛っ、それはやめろっ!」
「言うことは?」
「すみませんっした!」
「…………」
黒ローブの人物は後ろ髪から手を放すと青髪の青年から視線を反らす。青髪の青年は涙目で後ろ髪の根元を押さえつつ、黒ローブの人物に話を続けた。
「ったく。あ、俺から言っといたからな。薬物混ぜんなって」
「……そう。ありがとう」
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