銀の森に憩う月

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《白の薔薇》 白亜の城 迷い人 月は高く 誰が祈り 待つ城門は 堅く閉じ 透明な風 灰を散らせ 届かぬ幻影 硝子人形 青瑪瑙の瞳に 映る薔薇 記憶を持たない石の庭 忘れ去られた歴史達 語る術も持たぬ鳥籠に 命の名残も燃え尽きて 廃城の虜 行き場も無く遺されたのは 時の欠片に留まり 漂う 過去の縁(ヨスガ) 砕けた薔薇窓 冷えた床に 色を添え 翼持つ像は 尚も微笑む 映す瞳 割れた青瑪瑙 月の見せる 幻想の城 白亜の幻 魔法の護る 森の奥 蔓延る蔦に 閉ざした門も 侵入を許す 軈ては消え行く 時の深遠へ 色硝子も 青瑪瑙も 月を浴びる白薔薇は ただ静かに咲き誇る
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