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《手折る花》
静けさから生まれた物が
緩慢な舞踏を繰返す場所
開かれた扉の向こう側は
誰に語る事も無い
心の奥の不可侵の域
誰であろうと触れさせない
滾る感情から生まれた力
過ぎた後では覆せない
知らず眠る記憶の様に
得てはまた失う必定の環
価値をその身に問うなかれ
全てが終るその時迄
巡る巡る 優雅に廻る
オルゴールの人形
破壊の生む淘汰の海が
唯の一度も波立たぬかの様
火の燃える暖炉
身を寄せ合うのは凍えた心
陽の射す朝を夢に見ながら
煙る空を見上げる瞳
優しい優しい夢を見る
優しい優しい夢を見る
思うに過ぎない物語とて
病みかけの胸に必要ならば
静けさから零れた物が
新たな目覚めを待ち望む場所
手折る花を添える石畳
罅割れの数だけ人の歩んだ道
歌う鳥も既に飛び去り
咽ぶ薄闇には細い三日月
額の上に落ちる雫
古い街並を打ち据え潤す
知らず歩く幼子の様に
手を伸ばし伝い歩く路地
錆びた扉が重たく開く
誰もが穏やかな笑みで迎える
巡り触れる
優雅に廻る木馬の様に
張り巡らされた金の糸
或いは解き 或いは纏い
心の奥の不可侵の域
壊れかけた人形の住む部屋
優しい明日を夢に見ながら
誰に語る事も無い
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