つり合い

5/10
前へ
/94ページ
次へ
「一条先生は同じ医者だし、実家も開業してるし。村上先生とつり合いますね…」 「そうだね。 なんか、ごめんねぇ」 「はぁ…」 そう言われて電話が終わった。 好きになっちゃいけない人なんて、いない。 そう思う。 だけど、つり合いって、あると思う。 病院での他の人達の恋愛を見てきて、やっぱり、そう思う。 村上先生もそう思うのかな。 村上先生にメールする。 『さっき、一条先生と話をしました。一条先生と付き合っているんですか?どういうことですか?』 なんか、もう、いいや。そんな気持ちだった。 村上先生からメールが届く。 『一条には、昔、告白されたけど断っています。ただの後輩です。 あなたには、また逢いたいと思う。 家に来たのは事実です。一条が、次に赴任するのにマンションを探している。自分が出た後に住もうと思うから間取りを見せてほしいと言われ、家にあげました。さっと間取りを見せて、すぐ帰しました。 一条にまた告白されたら断るつもりです』 村上先生。 正直な人だから、きっとそれは本当のことなんだと思う。 少し、救われた気持ちになった。 でも、村上先生。 私は村上先生の本当の気持ちが知りたいんです。 逢いたいと思ってくれるのは、抱きたいだけですか? 卑屈な考えで、がんじがらめになってしまう。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加