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――タクトside――
世の中の大抵の事故や自然災害は、神様が大量に人の魂を呼び戻すためにやっているのではないか。
タクトはそう考えたことがあった。
タクトが天使になってからは、その後始末や警備に配属されることが多かった。
たとえば、まだ生きていなければいけない人が巻き込まれないように手を打ったりだとか、不幸によってくる悪魔を牽制したりだとか。
それが当たり前すぎて、人間だったころの気持ちを忘れるときがある。
「落ちた後って、それじゃあ遅いわよッ!」
先ほどからミアはうるさく講義する。
「人間、生きるも死ぬも、落ちた後の衝撃のひどさで決まる。俺は今、あんまり大惨事になって、みんな死ぬ、なんてことにならないように薬をまいた。遅くないだろう?」
「ことが起きてからじゃ遅いじゃない!」
俺には、彼女が怒っている理由が分からない。長いこと、人間の価値観から無縁の場所にいたからかもしれない。
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