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機内には、すでに死神がいた。
「また会ったねぇ、タクト君」
操縦席には、黒いマントを身にまとった男がいた。いや、男という表現もおかしいかもしれない。彼はすでに人じゃなかった。
「死神のヴァインか。何の用だ?俺が来たからには、すべての人の命はこの世界に残してもらう」
「横暴だなあ。こっちにも仕事があるんだよ」
男は不敵に微笑むと、俺の後ろに目を向ける。
しまった。新米天使を連れてきているんだった。
「あれ、すっごい美人さんがいるねぇ。しかも、すんごい強い魂のお嬢さん」
眉間にしわを寄せて相槌を打っているミアにこっそり囁く。死神なりのほめ言葉だから、ありがたく受け取ってやれ。
「余談はここまでだよ。今日の7時のニュースは、乗客、パイロット全員死亡にするよ。タクト君にあれこれやられると、テレビ局も死神も、その日の話題がなくてねぇ」
「他人の命は、お前らに狩られるためにあるわけじゃない。寿命が来たら送り届ける。それで十分だろう」
「何いってるのさ。タクト君が甘いから、最近の日本は少子高齢化が進んでるんだよ。人間のためにも、このサイクルを直さないと」
「逆も言えるな。死神が若い奴らを狩るのが趣味だから、お年寄りは相手にされていないだけで、実際、狩りすぎてるんじゃない?」
俺らは目線をそらさずににらみ続ける。こいつとは昔から、反りが合わない。
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