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なんだか大変なことになっている。
それだけは、なんでかわかんないけど感じた。
周りでは救急車の音とか、野次馬の声がうるさい。
でも、そんなとこから動き出したくても動かないのが私の体。
いたるところから血が出てるし、いたるところが痛いんだよ。
でも、これが現実って感じがしないの。不思議だよね、こんなに痛いのに。
もしかして死んじゃうのかな?
好きな人もいなかったし、両親も他界してる私の人生だもの。悔いはないよ。
なんて、死ぬ覚悟を決めてた。
なのに。
「やあ、こんにちは。ミアさん」
目が覚めたのは天国とかじゃなくて病院のベットだった。しかも、あたしの顔を覗き込んでいる人に鼻をつままれて起こされる。
「なんなんですか、あなたは」
手を振り払ってなんとか話す。
誰、このひと。こんな知り合いいたっけ?
「あれー、眉間にしわが寄ってるよ!せっかく生き返れたのにそんな顔じゃ、神に対しての冒涜だ!」
目の前の人は男だった。横になっているあたしの眉間をぐりぐりとほぐす。
「な、ちょっと、痛いです!痛いですからやめてください!これは地顔ですから!」
「えー、君の地顔って、いつもこんな不機嫌なわけ?そんなんだからトラックにはねられちゃうんだよ~」
「余計なお世話ッ……って、トラック?はねられる?」
「あんれ、覚えてないの?君、交通事故で死んだんだよ。ちょっとだけ」
目の前の男からそんなこと聞かされてしばらくフリーズ。自分の体を見回すけど、特に目立った外傷はない。
「ああ、怪我は全部完治したよ~。かなり長い時間意識がなかったから全部治っちゃったみたい。死に至る怪我は、僕が治しちゃったし」
「治しちゃったって、あなた一体……」
だって、すごいひどい怪我だったんだよ?
「僕は天使なんだ」
「はい?」
耳を疑う。天使?
「やっぱり死んだのか。ここはどこ?」
「いやいや、今は生きてるからキミ!天使が君に用があって生き返らせたんだよ!」
なんだそれ。非現実的じゃん。
「天使の中でも偉い人が、ぜひ君に、やってもらいたい仕事があるんだって。だから、人間として、天使として生き返らせたんだよ」
「え、じゃあ、あたしのこの体は、人間でもあるけど、天使でもあるってこと?」
天使はうんうんとうなずく。どうやらそうらしい。
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