終わりから始まりへ

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 日も暮れかけたころ、ようやく精密検査が終わり、あたしは退院できることとなった。  迎えの親戚の人が来ると聞いていたけど、親戚なんていないはずだ。  誰が来るのかと受付の椅子で待っていると、全く知らない男の人に声をかけられる。 「おい、行くぞミア」  横暴な低い声が心地よく受付外来にに響く。 「え、あたし?」 「おまえ以外にだれがいる。さっさと退院するぞ。  今日からパートナーの加藤タクトだ」  よろしく、と言わんばかりに差し出された手を、ミアは慎重に見つめる。  握手を求められているのかこれは。  しばらくするとその手は引っ込んでしまう。  受付でミアの名前が呼ばれたからである。  どうやら親戚とは彼のことらしい。 「どこに行くの?」  病院を出ると、彼は車に乗り込んだ。  仕事帰りなのか、スーツも着ていて、何となくカッコいい。  すらっとしていて、無駄な肉がないのが見てわかる。  歳はミアとそんな変わらない、二十歳すぎに見える。 「どこって、仕事だよ仕事。天使の仕事。  おまえには今からやってもらわなくちゃいけない仕事があるんだ」  そんな、あたし今退院したばかりなのに!…とは文句が言えない。  さすがに初対面の男性にずけずけと本音を言うつもりはない。 …相手は好き放題言ってくるけれど。 「何をすればいいの?」  助手席に腰を下ろすと座席に吸いつけられるかのような安定感があった。  見た目も大きいこの車、まさかCMでやってる最新型の車か?乗り心地がいい。  この人、結構金持ちなんじゃない?
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