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「こんな時間に誰だよ。」
携帯のディスプレイを見ると、『吉村 崇』の文字。
俺は電話に出た。
「もしもし。」
「もしもし、祐さん、見てくれた?」
深夜だというのに元気で大きな声。
眠い俺には少々堪える。
それでも、好きな人の声を聞けるというのは嬉しいものだ。
「お前なぁ、もう夜も遅いんだから、もっと静かにしゃべれよ。」
「ごめんごめん。それよりさ、番組見てくれた?」
声のボリュームが全く変わっていない。
こうなると、いくら言っても変わらないということを知っている俺は、あきらめることにした。
「ああ、見たよ。うまそうだったな。」
「そりゃーもう、すっごくうまかったんだよ。あさりのうまみとご飯のおこげが絶妙で!」
「うん、見てても伝わったわ。あれ、俺も食いたくなってさ。今度作ってくんねぇかな?」
すると崇は、受話器の向こうでクスっと笑った。
「おい、何がおかしいんだよ。」
「いやぁ~、思ったとおりだなって思って。」
「は?」
「俺さ、祐さん番組見た後、きっと食べたくなって、俺に作ってって頼んでくるんだろうなって気がしてたんだ。そしたら、本当に思ったとおりの反応だったから、おもしろくて。」
そう言いながら、崇は笑い続けている。
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