一章 転生前の一息

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「ん」 「ん、って私?」 「そ」 「冗談じゃないわよ。どうして?」 「だって強そうじゃん」 「当たり前でしょ。神だもの」 「じゃあ良いよな」 「………」  俺はパートナーもといサポーターに、神である八重瀬さんを選ぶことにした。  え? ズルイって? 反則じゃねーよ、これも一つの手だ。 「貴方はなんの為に転生するの?」 「あの日常から脱け出す為」 「それだけ? 強くなりたいとか「思ってるけど、やっぱ一番は楽しみたい。あの日常の中で楽しみなんて何一つ無かったからな」………」  黙って俺を見詰める八重瀬さん。無茶苦茶なことを言ってるのは分かる。だけど。  俺はこの人、いや。この神と一緒に行きたい。何故かそう思って止まないんだ。  この神となら――― 「…ハァ、仕方ないわねー……」  諦めたかのように溜め息を吐いた。てことは! 「おっけー!?」 「そういうことにしましょう」 「っしゃぁぁぁ!!!」  了承してくれた。  嬉しい。マジで嬉しい。まさか神とRPG染みたことが出来るなんて! 「ありがとなー!」 「別に、暇潰しよ」  淡々と返しながら用紙に記入していく彼女。 「でも流石に今から、っていうのは無理よ? 私にだってやることがあるんだし」 「それでもいい!」  狂喜乱舞。心の底から舞い上がりたくなった。まあここがこの世の一番上だけど。 「これでアンケートはおしまい。それじゃあ、いくわよ」 「え、へっ? 何が、」 「ま、死なない程度に頑張りなさい」  彼女がパチンッ、と指を鳴らした瞬間、 フッ…… 「え……」  俺の足下に穴が空いた。必然的に俺は重力に従って──── 「もっと普通のやり方は無いのかあぁぁぁぁ!!!」  奈落の底へ落ちていった。
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