序章 傷だらけの日常

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 突然訊ねられて暫し、ポカンとする。  生まれ変わり? 何じゃそりゃ? 「転生のことか?」 「そう捉えてくれても構わないわ」  そう捉える、って他にどんな捉え方があるんだ。  俺が首を捻っていると、 「貴方は自分の生活に満足しているの?」 「生活?」 「ええ。だって貴方は何の取り柄も無い、ただの、普通の、モブにして脇役でしょう? それだと言うのに、いじめの渦中に居るだなんて。この世界は現実だけど、例えるのなら貴方はモブ、なのにいじめられっ子。滑稽だと思わない? モブがメインかサブをいじめて、それを主人公が助ける、みたいな在り来たりな物語がこの世に多く存在している中、貴方はその逆で。もしかしたらメインかサブ? いいえ、貴方は正真正銘のモブよ」 「……それで?」 「だから、そんな貴方にチャンスを与える」 「チャンス?」 「そうよ。この現状から抜け出したいのなら、貴方にチャンスを与えても良いわ」 「それは……」 「『生まれ変わり』よ。生まれ変わりと言っても二種類あるわ。一つはこの世界に居るまま、ただ現状を壊す、つまりいじめを無くすということ。もう一つは……」 「まさか……」 「それこそが生まれ変わり、所謂『転生』よ。人間界で言う『トリップ』ね」  トリップ? 異世界に行くってヤツの?  何故そんなのが?  だが彼女は構わず話を続ける。 「どちらを選ぶのも貴方の自由。まあ第三の選択肢、『このまま』っていうのも選べるけど?」 「それは嫌だ!」  それだけは、嫌だ! 絶対に。  あんなのは、もう二度! 「そう。ならば決めて。どちらを選ぶか」 「……一つ聞いて良いか?」 「何?」 「仮にどちらかを選んだとして、お前にはそれを実現出来るのか?」 「──勿論」  と、一言。  暫しの沈黙。不思議と嫌では無かった。  彼女は変わらずの表情で、俺の返事を待っている。 ────よし。 「決まった?」 「ああ」  目を閉じて、開く。彼女の瞳の奥をジッ、と見つめた。 「俺は────」
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