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オレの叫びにも似た言葉に彼女は不思議そうに首をかしげて
「そう、
忘れてしまったの
5年前の8月11日を…」
呟くように『あの日』の日付を言った
「―――っ!!」
なぜ知ってる?
あの日を
――――――――――
――――――
真っ暗で血の匂いで満たされた車内
自分の呼吸音しか聞こえない
さっきまでオレを叱っていた母さんは?
運転をしていた父さんは?
そして隣で眠っていた妹は?
暗い、怖い、わからない
家族はどうなったのか
自分はどうなっているのか
これから自分たちはどうなるのか
不安、恐怖、疑問、心配
そして―――――
―――――――――――――――――――
・・・
あの日をどうして知ってる!?
困惑と恐怖が感情を支配する
そんなオレの状態がわかったのか彼女は
「忘れてしまったのね………
でもあの状況じゃ仕方なかったか」
納得したような彼女の様子にオレは
「おまえは何なんだ!?
どうしてあの日のことを知ってる!?」
と激しく問いかけた
すると彼女は悠然と微笑み
「それはあなたが思い出すべきなの
あなたはまた私に会うから
それまでに思い出して……
また会いましょう?
愛しい人」
そう言ってまた微笑み
オレの来た道へ向かって行った
オレはただ呆然と立ち尽くしていた
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