PROLOGUE

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「ふー」  と大きく息を吐きベッドに座った。  ここは俺の部屋で、学校の寮である。  この学校は全寮制であり、生徒も一部の教師も同じ寮にランダムで入れられる。  寮は第一棟から第十三棟まであり、どこもが四階建て、2LKで風呂トイレ空調も完備されている。  それがほぼ全て埋まっているから、そこはすごいと思う。  因みに俺は第五棟の三階の一番隅の部屋だ。 「なぜこんなことに?」  と呟き少しの間ボーっとした後、キッチンに行き冷蔵庫を開ける。  冷蔵庫の一番扉の中にはハム、ベーコン、卵、バター、牛乳、食パンと冷蔵庫にいれる調味料などが入っていた。相変わらず少ない。  その下の野菜室にはトマト、ニンジン、キャベツ、オニオンなど俺の好きな野菜がズラーッと並んでいる。  やっぱり野菜でしょ。野菜最高でしょ。白米をも超えるうまさでしょ。サラダにしてみろ。うまいぞぉ。よし、野菜最高!  と無駄な、本当に無駄な雑念が流れ込んで来たので、そんなことを忘れようと夕飯でも作ろうかと思う。 「今日は野菜炒めと白米だね。お手伝いしようか?」  はっ?  どこから聞こえた?  俺の背後?キッチン内であることは間違いないはず!  と言うことで後ろを振り向くと――、 「なに驚いているんの、しゅーんくん? 扉開きっぱなしだったから、勝手に入っちゃった」 「勝手に入んなよ! 不法侵入だぞ」  後ろにいた女性は額に手の甲をあて、舌を出し、「テヘッ」と言った。可愛らしいが、今はそんなこと問題ではない。  この女性は俺の受け持つクラスの隣の担任で、『藤崎 律』と言う。  綺麗な茶髪を肩にかかるかかからないかぐらいまで伸ばし、後ろ髪を軽く結んでいる。  綺麗か可愛いかで分けるとしたら可愛い方だと思う。生徒にも教師にも人気のある人物だが――、 「いいじゃない、どうせ幼なじみなんだしぃ」  ――そう幼なじみなのだ。しかも隣どおしの家に住んでいて、同居したこともあり(両親たちのバカな計らいのせいで)、物心つく前からの知り合いだ。つか腐れ縁。  だから、俺は大してこいつに想いを寄せるなんてしていない。絶対。今も隣の部屋だしな。  しかしこいつのおかげで、俺は教師になろうと決心した。  まあ、同じ学校に入ったのは想定外だったな。そもそもこいつが教師になれていたこと自体知らなかったし。
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