4人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふー」
と大きく息を吐きベッドに座った。
ここは俺の部屋で、学校の寮である。
この学校は全寮制であり、生徒も一部の教師も同じ寮にランダムで入れられる。
寮は第一棟から第十三棟まであり、どこもが四階建て、2LKで風呂トイレ空調も完備されている。
それがほぼ全て埋まっているから、そこはすごいと思う。
因みに俺は第五棟の三階の一番隅の部屋だ。
「なぜこんなことに?」
と呟き少しの間ボーっとした後、キッチンに行き冷蔵庫を開ける。
冷蔵庫の一番扉の中にはハム、ベーコン、卵、バター、牛乳、食パンと冷蔵庫にいれる調味料などが入っていた。相変わらず少ない。
その下の野菜室にはトマト、ニンジン、キャベツ、オニオンなど俺の好きな野菜がズラーッと並んでいる。
やっぱり野菜でしょ。野菜最高でしょ。白米をも超えるうまさでしょ。サラダにしてみろ。うまいぞぉ。よし、野菜最高!
と無駄な、本当に無駄な雑念が流れ込んで来たので、そんなことを忘れようと夕飯でも作ろうかと思う。
「今日は野菜炒めと白米だね。お手伝いしようか?」
はっ?
どこから聞こえた?
俺の背後?キッチン内であることは間違いないはず!
と言うことで後ろを振り向くと――、
「なに驚いているんの、しゅーんくん? 扉開きっぱなしだったから、勝手に入っちゃった」
「勝手に入んなよ! 不法侵入だぞ」
後ろにいた女性は額に手の甲をあて、舌を出し、「テヘッ」と言った。可愛らしいが、今はそんなこと問題ではない。
この女性は俺の受け持つクラスの隣の担任で、『藤崎 律』と言う。
綺麗な茶髪を肩にかかるかかからないかぐらいまで伸ばし、後ろ髪を軽く結んでいる。
綺麗か可愛いかで分けるとしたら可愛い方だと思う。生徒にも教師にも人気のある人物だが――、
「いいじゃない、どうせ幼なじみなんだしぃ」
――そう幼なじみなのだ。しかも隣どおしの家に住んでいて、同居したこともあり(両親たちのバカな計らいのせいで)、物心つく前からの知り合いだ。つか腐れ縁。
だから、俺は大してこいつに想いを寄せるなんてしていない。絶対。今も隣の部屋だしな。
しかしこいつのおかげで、俺は教師になろうと決心した。
まあ、同じ学校に入ったのは想定外だったな。そもそもこいつが教師になれていたこと自体知らなかったし。
最初のコメントを投稿しよう!