新たな人生

4/8
前へ
/9ページ
次へ
 口が開いたのを確認して、少し身体を起こして、ソーダ味のガリガリしたものが溶けたのを口に流す。 「……甘い、冷たい、美味しい!!」  先ほどまでぐったりしてた女は、目をぱっちり開き、俺を凝視してくる。 「全部飲む?」   青い袋を渡すと、がっついて飲み干す。  絶対、またあとで喉が乾くと俺は思う。 「……美味しい、もぅないの?」 「ないよ、それだけ」  一つしかないと伝えると、あからさまにしょんぼりしてこちらを見てくる。  ちょっと可愛いと思ってしまった。 「あの~ところであなたはどこの地区の方ですか? 見慣れない格好ですが?」 「地区? 墨田区だけど…… ここはどこ?」 「……スミダ地区? ここは集合の森ですよ?」 「集合の森? どこ? 東京都のどこにあるの?」 「トウキョウト?」  お互い頭にはてなが浮かぶ。 「とっとりあえず! 自己紹介しようか! 俺は、加藤 好隆(カトウ ヨシタカ)」 「長い名前ですね! 私はアルトです」 「んっ? 苗字は?」 「ミョウジ?」  お互いまた無言の時間が続く、なかなか気まづい。 「アルトさんは、なんで倒れてたの?」 「アルトでいいですよ? ちょっとヒルに噛まれてしまって」 「俺も好隆でいいよ」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加