壱/親(シン)

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遡ること半刻前。 安藤は山南敬介と名乗る優しげな男に部屋へと案内された。山南の入室を促す声で足を踏み入れる。 好意、驚き、警戒、好奇……。 部屋に入るなり突き刺さる視線が痛い。 「皆さん、今日から壬生浪士組に入った安藤早太郎君です」 山南は一言安藤を紹介する。 「近藤勇だ。 これから宜しく頼むぞ」 近藤と名乗る男は笑って安藤を迎えた。 見るからに器が大きそうな彼は綺麗な髷を結っている。 「沖田総司と申します。得意なことは土方さんから逃げることですね。宜しくお願いします」    健康そうな肌色に整った顔をした青年。 癒されそうな笑顔はまるで子供の様だ。髪は頭の高い位置で一つに結わいている。 ……この青年が「あの」沖田総司か。 安藤の口元が僅かに緩む。      「永倉新八だ。宜しくな、安藤」 続けて、 自己紹介しながら沖田の冗談らしからぬ冗談に苦笑する堅実そうな男。 体格が良く、近藤のように髷を結っている。 隣では沖田が「冗談じゃないですか」など呟き頬を膨らませていた。まるで駄々をこねる子供のように。 「俺は原田左之助。俺の腹どうよ?」 唯一短髪で凛々しい顔立ちをしたこの男。 原田はいきなり立ち上がると拳を握り自分の腹を豪快に見せた。
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