壱/親(シン)

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覗き込もうと身体を近付けようとすれば直ぐに冊子は閉じられ、何か言いたげな表情で原田を見た。 話は聞いておけ、ということだろうか。 沖田と永倉に挟まれて座る原田は仕方なく話を聞こうと耳を傾ける。 「平隊士ではなく助勤として入隊すること、 藤堂君からある程度北辰一刀流を学ぶこと。 この二つが表向きを北辰一刀流とする条件です」 同時に山南が名案とはいえない条件を口にした。 嫌ならば嫌と言えばいいだろうに、藤堂は何も言わず眉間に皺を寄せ安藤を睨み付ける。 「平助、諦めた方がいいですよ。 ………そうですよね、安藤さん」 先程まで冊子を手にしていた沖田が口元を指先で隠しながら、諦めろと促す。 沖田の肩は上下に震え、目は潤んでいた。 どうやら彼は笑いを堪えているらしい。 「ええ、そうです。 主の為ならば、私はそれくらい構いませんし」 表情を変えることなく肯定した。 あっさりと条件を呑んだ安藤に沖田はとうとう吹き出してしまう。     「くくっ……いやあ、安藤さんは大人ですねぇ」 「成人してますから大人なのは当然かと」 「ふふっ、それはそうですけどっ。 でも私、大人気ない鬼を知ってますからつい……」 面白がっている。 沖田(コノヒト)は確実に面白がっている。今の状況を。
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