其の一角 泣いた紅鬼

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「話が早くて助かる。罷千野組とそれに繋がる辻斬りの両方が、今回のお前の獲物ってわけだ」 しかし、赤龍は首を横に振った。 「情報が少なすぎる。せめてどこが根城かくらい、つかんでから来い。俺は無駄な時間は消費しない主義だ」 拒否して立ち去ろうとした赤龍を、走狗が両手を広げて止めた。通せんぼの形である。 「まあ待ってくれよ! この仕事ほっぽったら給料貰えないんだからさ!」 「お前の都合なんて如何(どう)だっていい」 「明日までには何とか調べておくからよ。どっかの宿にでも泊って待ってろってば。あんたにもボーナス出てんだろ?  羨ましいぜ。そうだよなあ従狛?」 走狗は犬に言い聞かせた。犬の従狛は「ワン」と赤龍に向かって短く吠えた。赤龍は少し困った顔をしたものの、従狛と走狗の視線に負けた。 赤龍は町を歩いて今夜泊まる宿を探す。走狗の言った通り、辻斬りを狩るごとにそれなりの収入を得ていたので宿に泊まることは容易だ。だが、彼は不確かな情報の辻斬りの為に一晩明かすなどしたくなかった。彼はある人物を追っている。辻斬り狩りになったのも、その人物の情報を出来る限り掴むためだ。 「俺が追うのは奴だけでいい……」 静かに呟いた。
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